heyakatsu_piano
image01
Interview
Artist Interview feat.Billboard Live Vol.2
Artist Interview
feat.Billboard Live Vol.2
BIGYUKI
ア・トライブ・コールド・クエストや J・コール、マーク・ジュリアナにロバート・グラスパーと、世界の名だたるアーティストらと共演し、全米No.1獲得の2作品に参加するという「日本人初」の快挙を成し遂げたニューヨーク在住の鍵盤奏者・BIGYUKIが実に4年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Neon Chapter』をリリースした。
最近ではカマシ・ワシントンのツアーに帯同するなどジャンルを越えて活躍するBIGYUKIだが、その素顔はどこまでも気さくで明るい人物だった。初めてピアノに触れたときのエピソードについて尋ねると、6歳の頃のエピソードを明かす。

「もともとは母がピアノを弾いていたんですよ。母の近くで遊んでいる時にピアノを弾いている姿を見て、それで自分でも弾きたくなったんでしょうね。レッスンを受けているうちに『紹介したい先生がいるから』と連れて行かれた先が、地元ですごく熱心に音楽教育をしている人のところだったんです。それからは、小学校中学年くらいまでクラシックのコンペティションなどいろいろ出るようになっていきました」

練習自体は「嫌いだった」と苦笑するが、それでもピアノを続けていたのはなぜだったのだろう。

「演奏していると、なんていうか……トランスする感じ? 『ゾーンに入った』なんて言い方もしますけど、アドレナリンが出て体温も上昇して『うわー、楽しい!』となるのではなく、どんどん醒めていくんです。ピアノを弾いている自分自身を、ものすごく冷静に俯瞰している状態になるんですよね。そうすると、首の後ろがヒヤッとするような感じがあって。母にはそれを、『音楽の風が吹いた』とかなんとか洒落た言い回しで伝えていた記憶があります(笑)。ある意味、あの感覚を求めて今もピアノを弾いていると言っても過言ではないかも」

そう幼少期の思い出を振り返りながら、楽屋に設置されている世界最小※の88鍵を備えたCASIOのデジタルピアノ、「Privia PX-S1100」をおもむろに弾き始めた。
※ ハンマーアクション付き88鍵盤・スピーカー内蔵デジタルピアノの奥行サイズにおいて
(2021年7月現在、カシオ調べ)
image02
「電子ピアノって、最高に状態の良いピアノサウンドをサンプリングしてあるわけだから、どんな弾き方をしても綺麗な音が出るじゃないですか。それって純粋に音楽を楽しみたい人にとって、めちゃくちゃ嬉しいことですよね。そう考えるとPriviaはこのサイズの最高峰と言っても過言ではないかも。ヘッドホンジャックが2つ搭載されているから、住宅事情で大きな音が出せなくても、いつでも親子で連弾など楽しむこともできる。まさに演奏を『楽しむ』ことにぴったりの楽器ですね」

一つひとつの機能を確かめながら、Priviaの魅力について語るBIGYUKI。普段から海をまたいだツアーやレコーディングが多い彼が、とりわけ注目したのはコンパクトで場所を取らないそのサイズ感やデザイン性だ。

「ツマミやスイッチなどがなく、タッチパネルだけのシンプルなデザインはインテリアにも馴染みやすそう。しかもBluetoothに繋げられるから、自宅でスピーカー代わりにスマホの音楽を楽しむこともできる。単三電池で動かせるということは、屋外でも気軽に演奏が出来るわけですよね。これからはキャンプファイアーで、ギタリストだけにいい思いはさせないよ? って感じですね(笑)」
image03
現在はコロナ禍で帰国中だが、昨年はニューヨークでロックダウンも経験している。

「今回のアルバムもスタジオでセッションしながら詰めていく作業が物理的に難しくなったため、データをファイルで送ったり、リモートでのコラボレーションがメインでした。そうするとある程度イメージが伝わるところまで自分で作り込まなければならなくなりました。例えばシングル曲になった「OH」などは、去年の春ごろに初めて自分で DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を立ち上げ、デモを作るところから始めています。これまでは誰かとペアを組んでやっていた作業を、自分一人でもできるようにならなければと思って挑戦した楽曲でもありますね。

普段から自分はメインアクトというよりは、アーティストをサポートすることのほうが多く、それはそれですごくチャレンジングな環境に身を置くこともできて楽しいのですが、自分のこととなると、忙しさにかまけてどうしても後回しになってしまうことが多かったので、そういう意味では、コロナ禍で集中して新しいことに取り組むことができたのは良かったと思っています。」

ライブをやったり人と会ったりすることはおろか、外出さえままならぬ日々が続く中、BIGYUKIのライフスタイルや創作活動にも次第に変化が訪れていった。

「コロナ禍で出来るようになったこと、まず一つは逆立ち!(笑) 今まで全くできなかったので練習したら、壁に足をつけた状態なら出来るようになりました。それともう一つが『プロダクション』ですね。要するに、自分で思いついた楽曲のアイデアを、誰かにシェアできるクオリティにまで、自分でも持っていけるスキルを身につけました。今までのように、ミュージシャンの友人宅まで気軽に出向いて行って一緒に何かを作るとか、そういうことができない時期が続きましたからね。とにかく時間だけは有り余っている状況なので、これまで忙しさにかまけてやっていなかったことにも挑戦しています。それと、ニューヨークではルームメイトが飼っていた犬にかなり救われましたよ。犬のお腹に顔を埋めて『充電!』とか言っていましたね、嫌がってよく逃げられたけど(笑)」

ステイホームが長引く中、最近は「おうち時間」をもっと有意義に過ごすためクリエイティブな趣味を持つ人が増えているという。そんな中CASIOは「#部屋活ピアノ」をテーマに、電子楽器の普及や音楽文化の発展を目指して活動している。
image04
▼Privia PX-S1100スペシャルサイトはこちら▼
image
「日本は世界的に見ても、ピアノを幼い頃に習っている人がすごく多い国だと思うんですよ。そのぶん途中でギブアップしてしまう人も少なくない。音楽は、人生を豊かにするためのものというよりは、習い事の一つという印象が強い気がします。ピアノの先生が厳しくて辞めてしまった人の話も聞きますし、ピアノを『断念』した、みたいな言い方もよくするじゃないですか。どこか『修行』とか『訓練』みたいな感じになってしまっていて、気軽に楽しめない人がいるのはもったいない。もちろん、文化の水準を高めていくという意味ではコンペティティブな部分も大切です。でもそれだけじゃない、もっと広い意味での音楽の楽しみ方や付き合い方があってもいいんじゃないかなって。『音楽が好き!』いう気持ちを、とにかく大事にしてほしいですね」

とはいえ、ピアノを楽しく弾くためにはやはり基礎練習も欠かせない。練習嫌いだったというBIGYUKIに、ピアノを長続きさせるためのコツについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「僕も最初の頃は、練習しないでもうまくなる方法とかないか色々調べたり考えたりしてみたけど、そんなものはないんですよね(笑)。まずは練習が楽しくなるための工夫をすることかな。演奏していて楽しい気持ちになるような楽器、それこそPriviaで『部屋活ピアノ』するとかね(笑)。今はいろいろとテクノロジーが発達して、それまではハードルが高かった楽器や機材が割と手軽に手に入るようになったじゃないですか。それによって誰もが気軽に音楽にアクセスできるのは、とてもいいことだと思います。やっぱり、人間は何かしら自分を表現しないとパンクしちゃいますからね。一緒にクリエイティブを楽しみましょう!」

Interviewed by 黒田隆憲
◎プロフィール
ジャズ~ソウル~ヒップホップが交差するNYの音楽シーンで最も注目される日本人キーボード奏者。ロバート・グラスパー、ローリン・ヒルをはじめとする大物アーティスト達から賞賛を集め、ア・トライブ・コールド・クエスト、J・コールのアルバムに参加するなど世界規格で活躍する。本年もカマシ・ワシントンとともにハリウッドボウルでの公演に参加するなど、日本人アーティストとして数々の偉業を成し遂げ、ブラック・ミュージック・シーンの旗手ともいえる活躍を見せる注目アーティスト。

◎リリース情報
アルバム『Neon Chapter』
2021/10/13 RELEASE
UCCU-1653 2,500円(tax out.)
Interview