CELVIANO Grand Hybrid ホームへ CELVIANO Grand Hybrid プレミアム・レビュー
ピアニスト 赤松林太郎
音も鍵盤もすべてが
プロユースのクオリティ
プロのピアニストとしてはもとより、指導者としても活躍する赤松林太郎さんに
『セルヴィアーノ グランドハイブリッド』の魅力をインタビュー。ご愛用者としての声をお聞きしました。

CELVIANO Grand Hybrid(以下GH)を弾いてみての印象をお聞かせください。

  GHの鍵盤は、一般のグランドピアノのものととても良く似ています。分かりやすく言うと、重さがグランドピアノとほぼ一緒。材質に木を使っている分、打鍵時と離鍵時の感触にも類似が見られます。

  特に音を出さない練習をした時に有効だと思うのですが、自分のタッチがどのくらいの深さまで至っているのか、それから離すタイミングやスピード、そういったフィーリングを鋭敏に指先で感じとることができます。そのため、速いパッセージを弾いた時に粒が揃っているか、揃っていないかの差が明確に聞こえる。非常にクオリティの高い楽器だと思いますね。

  音に関していうと、GHにはベルリン・グランドという音色が搭載されていますよね。このベルリン・グランド音色は、ベヒシュタインという20世紀に入る前からあるピアノメーカーとの共同開発により生み出されたと聞きましたが、電子ピアノにもかかわらず音質がとても豊かで、音が響いた後の減衰までの曲線がとても美しい。そのため、弾いていて次の音に向かうまでに気持ちをしっかりと込めることができます。指先のタッチと鍵盤が一体化しているという印象を非常に強く与えてくれる音色だと思います。

ベルリン・グランド以外のピアノ音色についてはいかがですか。

  明るくてハーモニーがとても美しいベルリン・グランド音色に対して、ハンブルク・グランド音色はとにかく華やかなのが特長だと思います。高音域になればなるほど輝く音で、私自身は、ハンブルク・グランド音色でショパンを演奏すると、とても心地いいなと感じます。さらに、その高音を支えるベースも素晴らしいですよね。左手の低音のボリューム感がとてもゴージャスに仕上がっていると思います。

  一方のウィーン・グランド音色は、華やかさが際立つハンブルク・グランド音色に対して、和音になった時、つまり音が密集した時の凝縮感が強く、ハーモニーが一つのユニットになっているような印象を受けます。ウィーンという名前の通り、やはりベートーヴェンを弾くのにぴったりで、耳にとても心地良いですね。

電子ピアノを練習に使うことについてどんな考えをお持ちですか。

  電子ピアノはアコースティックピアノと異なり、打鍵をセンサーで認識します。私たちがついおざなりにしてファジーになりやすい打鍵のコントロールであったり、本当に繊細なタッチコントロールというものを、このセンサーは全部感じ取ってしまうという点で、電子ピアノはよりデリカシーがないと上手に弾きこなせない楽器だと思います。そのため、電子ピアノを練習で使うと、自分の指先の感覚というものがとても磨かれていくような印象を受けます。

  それから、ピアノを弾いて良い音を出すためには、正しい打点を捉えることが大切です。アコースティックピアノなら、その弦を共鳴させる実感があるのですが、電子ピアノではそれが感覚として薄い。そのため、自分の演奏が美しい音を出しているかというのが電子ピアノでも分かるように、まずは良い音を知ってほしいと思います。良い音楽を聴いて、良い音楽の環境に親しむ中で電子ピアノを弾くのであれば、今自分の打った打点で美しい音が響いているか、欲しい音がどのくらい達成できているかというのを自身で問えるようになるはずです。

  アコースティックピアノと電子ピアノ、どちらが優れているとか、そういうことではなく、正しい打鍵を捉えるためのテクニックを教える上では、電子ピアノであってもアコースティックであっても変わらないと思っています。

音楽の本場であるヨーロッパで、電子ピアノはどのように受けとめられているのでしょう。

  ヨーロッパの建築物は、凄く古いものが多いですよね。パリでは100年、ブタペストでは150年というような建物に住んでいましたから、なかなか部屋自体を防音にするといった音楽対応のための改築というのは非常に難しくて、私の経験にもとづく印象では日本よりも音楽をする環境は厳しいと思っています。

  そのため、練習したくてもグランドピアノが置けない。アップライトピアノも音を出すという意味ではグランドピアノと一緒なので、どんな演奏レベルの人でも電子ピアノを持っている率が高いと思います。

  若い時分、国際コンクールを受けにいった際にも、必ず電子ピアノが廊下に並んでいました。みんながヘッドホンをして指慣らしをしたり、あるいは自分のメンタルを整えるということのために使っていて、電子ピアノがとても身近にあるのだなと感じたことを覚えています。ですから、ヨーロッパでは日本人が思っているほど電子ピアノとアコースティックピアノの違いというものを明確には位置付けていないのではないかというのが、私自身の印象です。

赤松さんはご自宅やミュージックバトンをはじめとするコンサートでも
GHを弾いていらっしゃいますね。

  私たちピアニストにとって電子ピアノが有効なのは、深夜・早朝に演奏できること。アコースティックピアノなら音が出せない時間帯に思う存分、時間を気にせずに弾けるというのはとても魅力的です。しかも、その電子ピアノにアコースティックピアノのようなリアリティーがあるとなおさらうれしく、そういう意味でGHは非常にありがたい存在です。

  私は自宅だけでなくコンサートでもGHを弾く機会があるのですが、そうしたコンサートでは、たとえ楽器が一緒だとしても演奏する会場によって響きがそれぞれ違ってしまうことがあります。いつもと同じ楽器なのに、出るはずの音とは異なる音が出てくる。そんな時、“お客さんにはこういう風に届けたいんだ”という演奏イメージへと近づけるために、音色であったり、テンポであったり、アーティキレーションであったりの違いにより私は弾き方を変えています。そうしたプロのピアニストの要求にしっかり応えてくれるGHは、やはりクオリティの高い楽器だと思います。

赤松氏の演奏とレビューを
動画でお楽しみください

ピアニスト 赤松林太郎

2000年にクララ・シューマン国際ピアノコンクールにて第3位を受賞。国際コンクールでの受賞は10以上におよぶ。日本国内の主要ホールはもとよりアメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ハンガリー、コロンビア、台湾などの世界中で公演。近年では、ウィーン各地で室内楽コンサートをはじめ、ドナウ宮殿でのドナウ交響楽団との共演で成功を収める。今日、ブダペスト国際ピアノマスタークラス講師、洗足学園音楽大学客員教授を勤めている。

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