C.ベヒシュタインと
セルヴィアーノ グランド ハイブリッド。
ピアニスト 近藤嘉宏さんが、
2台のピアノを弾き比べる、
初めてのコンサートに挑戦。

2月1日 東京の杉並公会堂で《ピアニスト 近藤嘉宏が奏でる「伝統と革新」》というテーマのコンサートが開かれました。使用したピアノは、C.ベヒシュタインD280とセルヴィアーノグランド ハイブリッド(以下GH)GP‒500BP。ヨーロッパを代表する伝統的なグランドピアノと、カシオ独自の技術から生まれたデジタルピアノの2台から、リストやドビュッシーが愛したというベルリン生まれの音色が広がりました。当日それぞれのピアノで演奏された曲目は、C.ベヒシュタインで、《ベートーヴェン ピアノソナタ 嬰ハ短調「月光」op.27‒2》《ショパン バラード 第4番ヘ短調op.52》 《ショパン 幻想即興曲 嬰ハ短調 遺作op.66》GHで、《ブラームス 間奏曲118‒2》 《ショパン ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9‒2》 《ショパン 練習曲「革命」 作品10‒12》 《リスト 愛の夢 第3番》 《ショパン 英雄ポロネーズ 変イ長調op.53》 アンコール曲は、C.ベヒシュタインで、《ショパン ワルツ第7番嬰ハ短調op.64‒2》 GHで、《ドビュッシー 「月の光」~ベルガマスク組曲より》 が演奏されました。

ひとつずつの音に耳を澄ますと、それぞれのピアノが持っている
「伝統」と「革新」という個性が伝わってきました。

今日のコンサートのテーマ「伝統と革新」についてどうお感じになりましたか。

近藤C.ベヒシュタインは、まさにヨーロッパのピアノのひとつの歴史、伝統。これ以上も以下もない特別な存在です。GHは、その遺伝子を受け継いでカシオの最新のデジタル技術から生まれてきました。個人的な意見ですが、いちばんの魅力になっているのはタッチだと思いました。
音楽を作るイメージ、音のイマジネーションの広がりはタッチから得られる部分が大きいんです。GHはその意味で、楽器として革新的でありながら、リアルなタッチという「音楽の原点」を持っているんだなと感じました。

C.ベヒシュタインとGH、2台のピアノを弾かれたご感想をお聞かせください。

近藤どちらも、音の世界観として違和感はありません。2台ともC.ベヒシュタインの音なんです。微妙な差はありますが、GHはタッチの部分などとてもリアルです。鍵盤に木を使っているからなんでしょうが、ステージ上では湿度や温度などで変化していきます。「変化する」というのは生きている楽器だからなんです。演奏家はその「変化」にアジャストしていかなければならないんですが、そのほうが、楽器が変化せず常に一定に弾けるよりも、演奏家にゆだねられる部分が多くなり、表現の可能性は広がるんです。その意味でも2台は同じですね。C.ベヒシュタインの音というのは繊細なんです。音のいろいろな成分が浮き立って、独立して聞こえてくるんです。音の分離の仕方が細かいんですね。
ここが大きな魅力のひとつなんですが、クリアに聞こえてなおかつ、その成分によっていろいろなメロディ、旋律の動きが聞き取れる。色彩やニュアンスが感じ取れるんです。この辺りは、GHも「音の精密さ」という部分で共通していると言えますね。カシオという会社の、追求を諦めない職人の技と言っても良いのかもしれません。演奏中は、ピアノと対話しながら音楽の表情を作っていくんですが、とくにGHで弾いた時に、ある種のニュアンスを作れる瞬間があったんです。「あ、これがあるんだ」「ああ、ここも、これもあるんだ」という。この発見には驚きました。GHがそこまで応えてくれたことに、ものすごい満足感がありました。

楽曲によって、C.ベヒシュタインとGHとで弾き分けられましたが、選曲の理由はありますか。

近藤2台のピアノの魅力がいちばん発揮できるように考えました。GHとC.ベヒシュタインは、それぞれに個性を持ったピアノです。ですから、微妙なタッチによる音の出方や、実際に出てくる音色など、体感的にも変わってくるんです。その性格やパーソナリティを把握した上で、2台の良さを生かすために、C.ベヒシュタインでは構成的な作品を選び、GHでは繊細に旋律を歌わせる、メロディを主人公にする作品を選んでいます。2つのピアノを往復するコンサートです。細かなことなんですが、そういう音の出る瞬間にまで神経を使わないと、満足できる音色は作れないと思いました。私にはとてもやりがいのあるコンサートなんです。

【お客様の声】

こういう2台のピアノのコンサートを聞く機会は初めてだったので、その美しい音に驚きました。C.ベヒシュタインの音はきらびやかでキレイで、GHの音はキラキラとして聴きやすく、どちらも素晴らしいピアノですね。いま、自分でも試弾コーナーでGHを弾いてみましたが、タッチが良く弾きやすいです。アコースティックピアノと変わらないですね。

初めてコンサートでデジタルピアノを聞きましたが、GHは本当に綺麗な音でした。近藤さんも「このピアノは楽しい」と仰っていましたが、音量を抑えられるので、自宅で夜弾く時もいいですね。置き場所も選ばないでしょうから、カフェなどにも似合うと思いますし、グランドピアノが置けない所でも大丈夫ですね。

近藤嘉宏

1968年、川崎市生まれ。4歳からピアノを始め、桐朋学園大学を首席で卒業。1987年日本音楽コンクール第2位。卒業後ミュンヘン国立音楽大学においてゲルハルト・オピッツのもと研鑚を積み、1992年ミュンヘン交響楽団との共演でデビュー。1995年国内デビュー。翌年CDデビュー。2004年ニューヨークのカーネギーホールに、2006年にムジークフェラインにデビュー。2016年にはミュンヘンのマックス・ヨゼフ・ザールでリサイタル、またウィーンのムジークフェライン大ホールにベート-ヴェンの「皇帝」でデビューするなど、色彩豊かな美音としなやかな音楽性は多くのファンを持つ。

DATA

[杉並公会堂]
2006年にリニューアルオープン。1994年に杉並区が日本フィルハーモニー交響楽団と友好提携を締結、以後定期的なオーケストラ公演や音楽鑑賞教室を行うなど、日本を代表するオーケストラの文化発信基地です。日本有数の音響効果を誇る大ホール、演劇や発表会など多目的に活躍する小ホール、リハーサルやパーティなど多目的に使える自由スペースのグランサロン、リハーサルやバンドの練習等にも利用できる5つのスタジオを備えた、地域の文化拠点となっています。
住所:〒167-0043 東京都杉並区上荻1-23-15 電話:03-3220-0401

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