赤松 林太郎
CELVIANO
Grand Hybrid
コンサート開進堂楽器
楽器センター金沢
2016.10.13
開演10:30
開場10:00
完全予約制
(入場無料)
ピアニスト
赤松 林太郎
2000年にクララ・シューマン国際ピアノコンクールにて第3位を受賞。十指以上の国際コンクールで受賞。日本国内の主要ホールはもとよりアメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ハンガリー、コロンビア、台湾などの世界中で公演。近年では、ウィーン各地で室内楽コンサートをはじめ、ドナウ宮殿でのドナウ交響楽団との共演で成功を収める。今日、ブダペスト国際ピアノマスタークラス講師、洗足学園音楽大学客員教授を勤めている。
演奏曲目
- ハチャトゥリアン作曲(赤松林太郎編曲):
「剣の舞」 - モーツァルト作曲:
「トルコ行進曲」 - ベートーベン作曲:
ピアノ・ソナタ第23番「熱情」第3楽章 - ドビュッシー作曲:
「2 つのアラベスク」第1番 - ピアソラ作曲(山本京子編曲):
「リベルタンゴ」
コンサート
朝10時という早い時間にも関わらず入場待ちが出るほどで、開場されたとたん、ホールは地域のピアノの先生を中心とした来場客でいっぱいに。
10時30分、開進堂楽器・楽器センター金沢の鍵盤フロアマネージャー 外松秀俊さんの挨拶で、石川県・金沢市でのMusic Batonが幕を開けた。
ピアニスト・赤松林太郎さんがステージに登場。
早速、赤松さん自身の編曲による「剣の舞」を「ハンブルク・グランド」音色で演奏。
「連打がすごく入りますよね。まずこれが、私にとっては衝撃でした。今までの電子ピアノでは、タッチ感がしっかりして連打ができるという経験は無かったです。このピアノに出会って、夜帰宅して今弾きたいと思ったときに本当に助かります。また、先週もハンガリーで国際コンクールの審査委員長を務めさせていただいたのですが、そういった場で本番前に会場に響かない音で練習したいときなどにこれがあると、生のピアノにとても近いタッチ感なのでとても助かるのにな、と思いました。」
そして、「ウィーン・グランド」、「ハンブルク・グランド」、ベヒシュタインとの共同開発である「ベルリン・グランド」の3つのグランドピアノ音色の違いを紹介。
「この3つの音色での違いが出ていますよね。音色という意味では、このピアノは強い弱いだけではなく、楽譜に書かれたフォルテやピアノに込められている ”音色の違い” が出せるんです。また、従来の電子ピアノは音を出した後が物足りなかったんです。音がすぐ消えてしまうし、どんなタッチでも減衰が一律でした。ところがこのピアノは、その加減がまるで生ピアノのよう。ペダルも、倍音が表現されています。機能が非常にしっかりしていて、踏み方で響きが変わります」
続いて「1個1個の音の粒立ちが素晴らしい。そこを聴いていただきたい。」ということで「ウィーン・グランド」音色で、「トルコ行進曲」を演奏。
「このピアノは指先の感覚を研ぎ澄まして弾かないと粗が目立ちます。逆に言えば、繊細なタッチのコントロールが効く、と言えます。また、ペダルの機能もしっかりしているので、踏んでいる間はずっと音が響いてくれるし、ゆっくり離すとゆっくり音が消えてくれる。そういったところも楽しんでいただけたら。」
という紹介の後、「熱情ソナタ」を「ウィーン・グランド」音色で演奏。
パリのカテドラルやウィーンのオペラ座などのホールの響きを再現する「ホールシミュレーター」機能を紹介した後、CELVIANO Grand Hybridを演奏したCD音源収録時のエピソードを披露。
「今回のCDで収録したドビュッシーは”ピアノ音楽は、ベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ” という有名な言葉を残しているくらい、ベヒシュタインは彼にとって大事な楽器でした。もちろん、生のピアノとデジタルピアノは同じではありません。しかし、CDはデジタルです。生のピアノを演奏して収録しても、聴くときはデジタルになっているのです。ただ、私は今回、あえて ”デジタルからデジタル” という形をとらず、マイクを立てて ”空気を通した” ライブな音にこだわりました。2日間にわたる収録でしたが、1日目が雨で音もくすみ、2日目は晴れでカラっとした音。鍵盤をはじめ木の素材を多く使われているということもあるのでしょうが、音が変わったのには驚きました。デジタルピアノでありながら、”生きている” と実感しました。」
そしてドビュッシーが愛したベヒシュタインと共同開発の音色「ベルリン・グランド」に切り替え、「アラベスク」でレガートを美しく歌わせた。
「どう人間の声のように歌わせるか、それがピアノを弾く上で最も大切なことです。ピアノの弦を打楽器のように打つのではなく、押す。また、離すのではなく、撫でる。そうすることでレガートができますが、こうした指先のデリケートな動きにもこの楽器はしっかり反応してくれるんです。またペダルについても、どのタイミングで踏むかが重要なのですが、弾くと同時に踏むとアタックがつき、弾いた後に踏むとやわらかい音になるなどきちんと表現してくれるので、生のピアノと同じようにペダルの勉強にも役立ちます。」
そして、3つのグランドピアノ音色はそれぞれバリエーションがあることも紹介し、セッコ(乾いた)な音で、ということで「ウィーン・グランド」音色の「ブライト」で最後の曲「リベルタンゴ」を颯爽と弾きこなし、会場を大いに湧かせた。
「いかがでしたか。想像していたよりも豊かな表現ができる楽器だということがお分かりいただけたかと思います。調律がいらない、というところも良いですね。そして最後に演奏したピアソラについて。ピアソラの曲にはエレキギターが入っています。20世紀後半からは、こういった電気を使う楽器が当たり前になっています。電気を使うという発想が無かった時代の曲が大半であるクラシック音楽を演奏する方々にはデジタルピアノに抵抗があるかも知れません。しかし、デジタルピアノであるこの楽器がこれだけのことができる、現代の住環境の中でピアノの疑似体験がしっかりできるんだ、ということをお伝えしたかったのです。是非、この会場の後ろにあるこの楽器を、実際に弾いて体験してみてください。」
コンサート終了後
赤松さんと来場客の方々との撮影会、そしてコンサート中にもエピソードが紹介されていた、赤松さんがCELVIANO Grand Hybridを演奏して収録されたCDへのサイン会が行われ、来場客のほとんどが参加して長蛇の列に。
同時に、CELVIANO Grand Hybrid体験コーナーでは、赤松さんのコメントに触発された来場客が熱心に試弾。CELVIANO Grand Hybridの鍵盤ユニットとグランドピアノの鍵盤ユニットの展示コーナーにも、熱心にスタッフの説明を聞く人々が集まった。
試弾された方々の感想
- 「3つのグランドピアノの音色の違いが良く出ていますね。私はウィーン・グランドが好みです。」
- 「鍵盤の戻りが良いので、弾きやすいですね。」
- 「私が持っているアップライトよりもタッチが良いです。」
- 「他のデジタルピアノを持っていますが、タッチ感がまるで違う。これにすればよかった!」
- 「(2つの鍵盤ユニットを見比べて)こっちがグランドなんですか?一見、区別がつかないですね。」
実際に試弾いただき、鍵盤ユニットを見比べていただいて、CELVIANO Grand Hybridのピアノとしてのクオリティの高さを実感いただけた様子だった。
※今回のMusic Batonの模様は、11月18日発売の「月刊ショパン」にも掲載されています。