技術と想いが詰まった新しいキーボードが完成
シンプルな見た目ながら良い音が出ると楽器を実現するために、AiX音源をもとにどのような音作りをしていったのでしょうか?

佐藤: まずAiX音源は、“Acoustic Intelligent multi-eXpression”音源の略なんですが、いろいろな楽器の豊かな表現力に一番こだわった、鮮明でリアルな音が特徴です。例えばピアノだったら、音源の豊富な波形容量を活かしてすごく豪華な艶のあるものを目指しています。一方で、オルガンやエレピなどは、エフェクトやアンプのモデリングを活用し、味わい深い音を意識して丁寧に仕上げています。
CT-S1には、ADVANCED TONESという特別な音色が入っています。
佐藤: ADVANCED TONESは今回一番力を入れた音色の1つで、AiX音源を駆使した“新しい演奏表現ができる音”と定義しています。強さや単音/和音っていうような弾き方の違いによって、ガラッと音が変わるユニークで独創的な音を目指しました。
例えば、ADVANCED TONESの中に、MAGNI SYNTH-PADっていう音色があります。単音で弾いてもピアノとシンセがユニゾンで鳴る面白いサウンドなんですが、強く和音で弾いた時に一気にシンセパッドが加わって別世界のような壮麗なサウンドスケープが広がります。1つの音色でもいろいろな表情が出てきて、すごく面白い仕上がりになっています。開発者のこだわりが、一番余すところなく出た音色になっているかなと。
それから、ADVANCED TONESのエレピの音色もこだわって作られています。当初、フェイザーをガッツリかけた、映える音にしたいと思って作ったんです。それをプロの方々に弾いていただいたところ、実践で使うものはもっと上品にかけると言われて、ごっそり削ったりもしました。大嶋さんじゃないですが、音色の開発者も途中でサジ投げるんじゃないかってくらい、ミュージシャンからはいろいろな意見があったんです。でも結果的には、その期待を上回る感じで返してもらって。完成した音をミュージシャンに弾いてもらった時に、本当に涙が出そうになりました。
さらにCT-S1には、CASIO CLASSIC TONESというカシオのビンテージ楽器のサウンドも入っていますが、これらを入れようと思ったのは?
佐藤: 電子楽器を40年以上作り続けてきている中で、今もミュージシャンに愛されているものがあるので、原点回帰の意味も込めてそれらを入れました。評価が高いデジタルシンセの CZ やVZ に加えて、飛び道具的なVL-1やCasiotone第一号機のCasiotone 201のエレピ音色など、今の音楽シーンでも使えるものを選びましたね。社内には、当時の開発者もいるんですよ。そういうレジェンドたちにも伝承してもらいながら作っていったんです。例えば、当時VZ-1の SeeGodっていう音色を作った方がチームにいらっしゃって。実機で弾いてみたら、本当にその名を体現してるかのような、圧倒的に壮大な音でした。冷たい金属っぽい感じも残しつつもすごくカッコイイ音だったんです。まさに、神を見た!っていう(笑)。これはいい!となって、そのまま入れちゃいました。

初心者が手に取りやすい楽器ではありますが、マニアックな人も喜ぶような音も入っているんですね。
佐藤: 逆に、今まであまり入ってなかったんですよね。ある程度経験値がある人にも面白がって使ってもらいたいので、そういうところを積極的に入り口としていきたいなと。VL-1の音も面白くて、左手でシーケンスを鳴らして、右手でメロディ弾いて楽しめるんです。ミニキーボードのVL-1にはなかったけど、CT-S1で61鍵になったからこその隠し機能みたいな感じで。
ここまでお話を聞いて、本当に多くの工夫がされていることがわかりました。
佐藤: そうですね。時には、ほとんどやり直しみたいなこともあって。時間が全然ない中で、開発者には何度もトライしてもらいました。本当に全力でここまでのクオリティにしたなっていうのはありますね。この3人が代表して出てきましたが、今日来ていない多くのメンバーの熱量が注ぎ込まれたことで実現できたと感じています。
楽器として完成した今、どういう感想をお持ちですか?
岡: 僕は、自分でも買って弾き始めようかなと思っていて。弾いてみたいとはずっと思っていたんですけど、やっと自分でも欲しくなるキーボードに出会えたっていうか。みんなの力ですごくいいものに仕上がったなって感じてますね。
大嶋: 2年近く前にデジタルピアノのPrivia PX-Sシリーズが市場に出て、とてもスリムなピアノで、従来からのブレイクスルーを起こしたと思います。このCT-S1も、今までのキーボードの殻を破るというか、このコンパクトさとシンプルさとデザイン性をまとめ上げられて、本当に良かったなと思います。
佐藤: とことんコンパクトさを追求しながら、要素を極力最小限にして、そこに感動レベルの音が詰まっています。それによって、鍵盤楽器始めてみようってなった時の最良の選択肢を世の中に出せるっていう手応えがあります。先ほども言いましたけど、持ち運びができる鍵盤ということで、ギターとか管楽器みたいな気軽な使い方ができるような、そういう世界をこれで作っていきたいなと思っています。
最後にユーザーの方々にメッセージをお願いします。
大嶋: シンプルながら、ありそうでなかった新しいキーボードを提案できたかと思います。ぜひリビングやお部屋に置いて楽しんでいただければと思います。
佐藤: 音楽が好きで、自分でもちょっとやってみたいと思っている方々にとっての入り口であり続けたいんです。好きな曲の練習でも、思いのままに弾くでも、音楽に向き合うとその人なりの発見が必ずあると思います。そういう体験自体すごく贅沢なものだと思っているし、この楽器がその入り口となって、自分だけのオリジナルな音楽体験というものに最短距離でつなげられるんじゃないかなと。忙しい日々の合間の時間に軽く弾いてもらっただけでも、心の琴線に触れるっていうか。ささやかかもしれないですけれど、得難い体験みたいなものがこの楽器でできると思うので、ぜひ触れてみてください。
岡: キーボードを弾けない自分自身がすごく欲しいと思えるものに仕上がってるので、鍵盤楽器を弾いたことがない人にも、例えばお店で見かけた時に、目を止めてもらって考えてみてほしいです。部屋に置いている姿とか、自分が演奏してる姿とかをイメージしてもらって。デザイン的にも、中身的にも、とても良いものとなっていますので、ぜひ手にとってみてください。


