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Features
Classic and Cuisine
国内外で活躍するピアニスト・赤松林太郎さん。食にも造詣が深いことで知られている赤松さんが、音楽と食事の共通点を探るこの企画。第二回の今夜は、神宮前で本格的なハンガリー料理を楽しめる「アズ フィノム」を訪れた。
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長い歴史の中で生まれたハンガリーの文化
ハンガリーは、僕の場合は学生時代に首都・ブダペストで過ごした経験もあり、仕事でも何度も訪れた国なので身近ですが、日本で過ごしているとあまり馴染みがないかもしれません。ですが、かつてはハプスブルク家のオーストリア皇帝がハンガリー国王を兼ねるオーストリア=ハンガリー二重帝国として栄え、多くの文化が生まれた場所です。僕にとっては作曲家リストの生まれた故郷だというのも大事なことですね。

食事の前に「アズ フィノム」のオーナー・東孝江さんとハンガリー談義で盛り上がりました。そこで東さんがおっしゃっていたのが、ハンガリー料理は日本人にとってどこか懐かしさを感じるということ。料理が似ているわけじゃないのに、不思議ですよね。実際にハンガリーに訪れた時も、陽気で優しいハンガリーの人々とすぐに親しくなれ、お家にお邪魔した時はお土産に手作りのジャムなんかをたくさんもらったのを思い出しました。ハンガリーは誰にとっても、故郷のような場所に感じられるのかもしれませんね。
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どこか懐かしさを感じるハンガリー料理
ハンガリーは実はワインのポテンシャルがとても高い。長い歴史があり、中でもトカイ アスーという貴腐ワインは、フランス国王ルイ14世が「王のワインにしてワインの王」と称したと伝えられています。僕は食事の一杯目としていただきました。甘いのに喉をスッと流れるようで、食事のスタートを鮮やかに彩ってくれますね。また、今回は食後酒としてパーリンカというお酒も出していただきました。これはフルーツを使っている蒸留酒で、ハンガリーでは頻繁に飲まれています。自宅に招かれたら「まず一杯!」という感じで、僕もあちこちでたくさん飲ませてもらいました。アルコール度数は高くても、フルーツの香りが爽やかで飲みやすいんですよね。だから気が付かない間に飲み過ぎてしまうんだけど(笑)。
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ワインの歴史と同じように、ハンガリー料理も歴史が長いんですよ。海のないハンガリーでは農業が盛んで、ハンガリー料理に欠かせないパプリカも、ハンガリー発祥の野菜です。ペルーから持ち込まれた唐辛子を辛くないように品種改良し「パプリカ」と名付けたそうです。その後西ヨーロッパに広がり、更に品種改良されたものが現在世界中に普及しました。今では日本でもすっかりお馴染みですね。
そしてハンガリーはフォアグラ大国でもあり、フランスにも多く輸出されています。前菜としていただいた「3種類の冷製フォアグラ」はきめ細かな舌触りで旨味が詰まっていました。フォアグラというと脂のとろりとしたイメージがあるかもしれませんが、今日いただいたものは繊細でなめらか。「スズキのソテー」やメインの「小鴨のロースト」もハンガリーではよく食べられている一皿です。ハンガリーの文化や食事に馴染みが薄くても、実際に料理を目の前にすると親しみやすさを感じませんか? 一緒にいただいたワインのおかげで、味のコントラストが楽しめました。
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スズキのソテー ポルチーニのソース ポテトのミルフィーユ添え
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小鴨のロースト 自家製デミグラスソース
ポテトとオニオンのオーブン焼き 紫キャベツを添えて
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音楽家のハンガリーへの憧れ
ハンガリー音楽といえば、僕にとってはやっぱり作曲家のリストの存在が大きいですね。ブダペストでの留学期間も充実した毎日でした。旋律の宝庫で、美しい曲がたくさんありますが、ハンガリー音楽が持っているリズムには騎馬民族やロマのDNAが流れているんでしょうね。

DNAといえば、ハンガリーの人たちは気分が乗ると歌ったり踊ったりするんですよ。「アズ フィノム」の店内には、ハンガリーでも民族楽器として使われているツィンバロンがあります。これは弦を2本のバチで叩いて演奏する楽器で、ピアノと同じようなペダルもあります。ブダペストのレストランで何度も音楽が奏でられ、興に乗った人たちが躍るのを見ました。食事と音楽は切っても切れない関係で、場を盛り上げる音楽はハンガリーの日常に溶け込んでいるんでしょう。陽気で楽しい人々との交流は今でも忘れられないですね。
Classic and Cuisine
今回、CELVIANO Grand Hybrid GP510-BP で演奏したのは、フランツ・リスト作曲の「ハンガリー狂詩曲 第13番」です。

歴史学的にも民俗学的に見ても、さまざまな文化が混じり合うことで洗練されていったハンガリーの音楽。音楽家にとってハンガリーは憧れなんですよ。
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音楽も食事も記憶を思い起こしてくれる
最近ではウクライナ情勢など、世界規模で不安なことが多く、僕もヨーロッパで予定していた仕事が中止になったりしました。ヨーロッパは地続きなので考えなければならないことは多いですが、国境を越えたり、地域が変わるたびに感じる言語や風習の違いは、音楽にも表れます。食事をしたり音楽を聴いたりしていると自分が現地で過ごした日々がよみがえりますね。
食事をしながら東さんと話していると、駅前の様子やお店の名前まで次々思い出せるんですよ。旅行や食事は手元に何も残らないと思いがちだけれど、自分の記憶や経験としてしっかり刻まれています。ハンガリー各地に友人がたくさんいるので、皆でまた美味しい食事を楽しみたいです。
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赤松林太郎(ピアニスト) プロフィール
世界的音楽評論家ヨアヒム・カイザーにドイツ国営第2テレビにて「聡明かつ才能がある」と評された2000年のクララ・シューマン国際ピアノコンクール受賞がきっかけとなり、本格的にピアニストとして活動を始める。
1978年大分に生まれ、2歳よりピアノとヴァイオリンを、6歳よりチェロを始める。幼少より活動を始め、5歳の時に小曽根実氏や芥川也寸志氏の進行でテレビ出演。10歳の時には自作カデンツァでモーツァルトの協奏曲を演奏。1990年全日本学生音楽コンクールで優勝して以来、国内の主要なコンクールで優勝を重ねる。神戸大学を卒業後、パリ・エコール・ノルマル音楽院にてピアノ・室内楽共に高等演奏家課程ディプロムを審査員満場一致で取得(室内楽は全審査員満点による)、国際コンクールでの受賞は10以上に及ぶ。
国内各地の主要ホールはもとより、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、台湾、コロンビアを公演で回る一方で、2016年よりハンガリーのダヌビア・タレンツ国際音楽コンクールの審査員長を歴任しており、近年はヨーロッパ各地で国際コンクールやマスタークラスにも多数招聘されている。
これまでに新田ユリ、手塚幸紀、堤俊作、西本智実、山下一史、マルク・アンドレ―エ、デアーク・アンドラーシュ、ミロスウァフ・ブウァシュチック、タラス・デムチシンの指揮のもと、東京交響楽団やロイヤルメトロポリタンオーケストラ、ロイヤルチェンバーオーケストラ、デュッセルドルフ交響楽団、ドナウ交響楽団、シレジア・フィルハーモニー管弦楽団などと共演。キングインターナショナルから《ふたりのドメニコ》《ピアソラの天使》《そして鐘は鳴る》《インヴェンションへのオマージュ》《ブルクミュラー 25&18の練習曲》《わたしを泣かせてください》をリリース。新聞や雑誌への執筆も多く、エッセイや教則本などの単著も次々と刊行。
現職は、大阪音楽大学准教授、洗足学園音楽大学客員教授、宇都宮短期大学客員教授、ブダペスト国際ピアノマスタークラス教授、カシオ計算機株式会社アンバサダー。
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撮影協力:AZ Finom
http://www.az-group.jp/az-finom/
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2-19-5 AZUMAビル B1F
TEL : 03-5913-8073

定休日 日曜日・月曜日・祝日
Lunch 12:00~15:00(L.O.14:00)
Dinner 18:00~22:00 (L.O.21:00)
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