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Features
Classic and Cuisine
国内外で活躍するピアニスト・赤松林太郎さん。食にも造詣が深いことで知られている赤松さんが、音楽と食事の共通点を探るこの企画。第一回となる今夜は、近年、恵比寿で愛されているイタリアン「RISTORANTE MASSA」でクラシック音楽が生まれたイタリアについて思いを馳せた。
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偶然の出会いが食と音楽の縁をつなぐ
もともと食事が好きで色々とお店を周っている中で、「RISTORANTE MASSA」は、偶然歩いている時に見つけたんです。素敵なお店があるなと思ってランチで入ったら、雰囲気もいいし味も美味しくて気に入りました。パスタをお代わりしたんですよ(笑)。それくらい美味しかった。調べたら神戸勝彦シェフがオープンさせたお店だとわかりました。僕はテレビ番組「料理の鉄人」が大好きだったんですよ。ここがそのアイアンシェフである神戸さんのお店でした。残念ながら神戸さんは亡くなっていて、今は吉田洋平シェフがお店を受け継いでいます。だから僕が惚れたのは、吉田シェフの味なんですね。
僕はフランスのパリで音楽を学びましたが、ある時「これ以上ここで学んだら、君は私(フランス・クリダ)のコピーになってしまう。だからもうここにいてはいけない」と言われ突然師匠から突き放されました。その後、先生は病気で亡くなりましたが、師匠を失うという境遇が吉田シェフと似ているようで、運命を感じましたね。
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伝統を大切にするからこそ、進化していく
イタリアといえば音楽も食も歴史が深いですね。クラシック音楽が生まれ、オペラが発展したのがイタリアです。食事もローマ帝国の発展と共に、大きな影響を諸外国に与えました。世界三大料理のひとつであるフランス料理も、イタリア料理の大きな影響を受けています。長く続く歴史の中で、イタリアでは音楽も食事も楽しむ文化があります。この考えは僕にとって、このコロナ禍でより大切に感じられました。音楽や食事を楽しむ気持ちがないと、心が貧しくなる…そんなことを改めて実感しましたね。
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今回、吉田シェフに提供していただいたお料理は、イタリア本場の味が感じられ、どれも素晴らしいものでした。前菜の「オマール海老の冷製、カリフラワーのパンナコッタとともに」、パスタは「スペシャリテ かぼちゃのトルテッリ ゴルゴンゾーラチーズソース」、そしてメインは「和牛頰肉のグーラッシュ、赤いお野菜のソースで」。イタリア料理でありながら、パスタにはかぼちゃの甘さと胡桃のアクセントが日本的で、メインの頬肉に添えられたさつまいもは石川県能登のものです。伝統を大事にするイタリア料理に日本人シェフの繊細な技と思いが込められているようで、それがこの味を生んでいるんですよね。
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スペシャリテ かぼちゃのトルテッリゴルゴンゾーラチーズソース
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和牛頰肉のグーラッシュ、赤いお野菜のソースで
イタリアで生まれたピアノも進化して、現在、僕は日本のテクノロジーが生み出したCASIOの電子ピアノを弾いている。伝統を大切にする中で、変化や進化していく歴史を感じましたね。
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クラシックにこだわるイタリア音楽
今回、CELVIANO Grand Hybrid GP510-BPで演奏したのはイタリアのオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニ作曲の「小さなワルツ」(歌劇「ラ・ボエーム」より”ムゼッタのワルツ”)です。プッチーニは「トゥーランドット」や「蝶々夫人」などの様々なオペラを作っています。イタリアの音楽はとにかくクラシックにこだわっているなと思っているんですよ。フランスだとキーワードは「モード」です。時代と共に大きく変化し続けていくモード(流行)に対して、イタリアは長い歴史を大切にするクラシック(伝統)。この大きな違いは国民性も表しているようで面白いですね。
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そして、イタリアの音楽を聴くときは、光と影を描き出すような表現にも注目してもらいたいです。影が濃ければ濃いほど、光は明るく素晴らしく見える…絵画や建築と同じように音楽でもこのコントラストは楽しめるんです。
楽譜がレシピだとすると、素材や季節に合わせて微妙に変化させていく点は『料理』と『音楽』のもう一つの共通点かもしれませんね。
GP510-BPを演奏するときに、アコースティックピアノと何が違うか気になる人もいるかもしれないけど、この楽器は世界三大ピアノの一つであるベヒシュタインとコラボレーションして創られただけあって、タッチや音もアコースティックピアノと近く、ピアノとしてのクオリティーがとても高い。
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食も音楽もその国の歴史と寄り添っている
食事をしていると、お皿の向こうからイタリアの風景が見えてくる。特にコロナ禍の影響で海外旅行に行けなくても、今までより気軽に食を通して現地の空気を感じられると思います。食の文化と同じように、音楽や芸術の文化もその国の歴史と密接に寄り添っているんだと気づけば、心の栄養になるようなもっと豊かな時間を過ごせるんじゃないでしょうか。
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それにしても、第一回が吉田シェフで本当によかった。神戸シェフの味はもう食べられないんだと思うと寂しいけれど、その味を受け継ぎつつ自分の料理に向き合っている吉田シェフに出会えたのはやっぱり運命なのかな。
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赤松林太郎(ピアニスト) プロフィール
世界的音楽評論家ヨアヒム・カイザーにドイツ国営第2テレビにて「聡明かつ才能がある」と評された2000年のクララ・シューマン国際ピアノコンクール受賞がきっかけとなり、本格的にピアニストとして活動を始める。
1978年大分に生まれ、2歳よりピアノとヴァイオリンを、6歳よりチェロを始める。幼少より活動を始め、5歳の時に小曽根実氏や芥川也寸志氏の進行でテレビ出演。10歳の時には自作カデンツァでモーツァルトの協奏曲を演奏。1990年全日本学生音楽コンクールで優勝して以来、国内の主要なコンクールで優勝を重ねる。神戸大学を卒業後、パリ・エコール・ノルマル音楽院にてピアノ・室内楽共に高等演奏家課程ディプロムを審査員満場一致で取得(室内楽は全審査員満点による)、国際コンクールでの受賞は10以上に及ぶ。
国内各地の主要ホールはもとより、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、台湾、コロンビアを公演で回る一方で、2016年よりハンガリーのダヌビア・タレンツ国際音楽コンクールの審査員長を歴任しており、近年はヨーロッパ各地で国際コンクールやマスタークラスにも多数招聘されている。
これまでに新田ユリ、手塚幸紀、堤俊作、西本智実、山下一史、マルク・アンドレ―エ、デアーク・アンドラーシュ、ミロスウァフ・ブウァシュチック、タラス・デムチシンの指揮のもと、東京交響楽団やロイヤルメトロポリタンオーケストラ、ロイヤルチェンバーオーケストラ、デュッセルドルフ交響楽団、ドナウ交響楽団、シレジア・フィルハーモニー管弦楽団などと共演。キングインターナショナルから《ふたりのドメニコ》《ピアソラの天使》《そして鐘は鳴る》《インヴェンションへのオマージュ》《ブルクミュラー 25&18の練習曲》《わたしを泣かせてください》をリリース。新聞や雑誌への執筆も多く、エッセイや教則本などの単著も次々と刊行。
現職は、大阪音楽大学准教授、洗足学園音楽大学客員教授、宇都宮短期大学客員教授、ブダペスト国際ピアノマスタークラス教授、カシオ計算機株式会社アンバサダー。
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撮影協力:RISTORANTE MASSA
https://www.massa-ebisu.com/
〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿1丁目23−22 小林鉄工ビル 1F
TEL : 03-5793-3175

定休日  第一火曜日、毎週水曜日
Lunch 11:30-(L.O 13:30)-15:00
Dinner 18:00-(L.O 20:00)-22:00